アメリカ型鉄道模型・連載コラム『モデルライフ』 Vol.32
「LB4」の撮影や執筆、それに一部追加製作をやったり、今年のJAMコンベンションへの出品作品も造ったり、その間にD&GRNのある部分に突如手を着けたくなったり‥と、模型から模型へ、手も頭の中も忙しい毎日です。
JAMコンベンションに出す、新作「大平原の機関庫」は、先日、ウオルサーズの130フィート転車台をベースに取り付け、ブラス製の2-8-8-4を乗せて回転試験してみましたが、よく回ります。これだけ大きい機関車がゆっくり、しかも滑らかに回転するのは、ちょっと感激ものです。
このターンテーブルは今年、DCC対応仕様(私には関係ありませんが)となって再発売されましたが、これが現地の希望小売価格で350ドルです。それで、これだけ遊べます。日本の模型メーカーもC62の2番と3番、新幹線の16輌編成みたいなものばかり造っていないで、たまには、こういう、違う遊ぶ方のできる、しかも手ごろな価格の製品を考えてもらいたいものです。
このターンテーブル、現物は初回発売の時にいち早く買ったまましまいこんであった品なのですが、実は2回目に発売になった時に買い込んだ同じものが、倉庫にあと4個眠っているのです。
当初、このターンテーブルはD&GRNのリンデンウッド機関庫の昔から休止状態になっているダイヤモンド・スケール社のキット組み立て品と交換しようか、ということで購入したのです。
しかし、駆動部分がすべてプラスティックということで、「重いブラス機関車を載せて、負荷ですぐ磨耗しないかしら?」という心配を持ったのです。近年のウオルサーズの製品はすぐに絶版になるので、壊れたら補修部品も手に入らず、直し様が無いか、と疑ったわけです。
ところが、当鉄道ターンテーブル・プロジェクト休眠委員会の長である、平井さんが、いつもは物を買う話には消極的なのに、珍しく「5個も買い込んでおいて、つぶれたら交換すれば、僕らが生きている内ぐらいは持つんじゃないの?」と提案したのです。
「それは名案!」と早速4個追加購入したのですが、肝心の1個目すら交換する動きもなく、そのうち、長年眺めてきたダイヤモンド・スケール製品の方も、その味わいに愛着が涌いてきて、「何とか、あれを復活できないか?」とも考えるようになってしまいました。(荷重が前後で不均等になるため、軸が撓みやすく、それで回転が滑らかでない。軸受け部をベアリングなどで改良しては?‥というのが30年の懸案)
それで今回、ターンテーブルに関する工作や配線の習作としても、とりあえず1個をディスプレー的に使ってみることにしたのです。耐久性もテストできるでしょう。(試す人間の耐久性の方が怪しかったりして‥)
もっとも、「ターンテーブルを主題にしたレイアウト・セクション」という構想は、「とれいん」を創刊した当時、いやそれ以前から想い描いていました。
「食卓に載るサイズで、ファッション・ショウのモデルのように、機関車が出てきては観客の前で、グルッとターンして4方向を見せては引っ込んでいく」というもので、そうやって機関車を超スローで動かしながら、お酒やコーヒーを飲んだら、固定レイアウトでなくとも、かなり楽しいのではないか?と考えたわけです。
そういう長年の構想というか興味を今年、実現してみよう、と、JAM出品の新作に決めたわけですが、要するに私の場合は昨年のフェリーもそうですが、何か締め切りを設定して、そこに自分を追い込むのが、一番のカンフル剤になるのです。
ところが、いざ枕木を貼ろうという段になって、35年以上に亘って愛用してきた、平井さん作の、キャンベル枕木を並べる治具が行方不明になってしまったのです。昨年のJAMコンベンションの会場に持っていったところまでは記憶しているのですが、撤収の時に何人かで手分けして、工具や材料を手当たり次第に箱詰めして帰ってきた際に、どこへ入ったのか、埋まったのか、判らなくなってしまったようです。
こんな探し物をしているのが時間の無駄、と諦め(事実、かなり傷んで、磨耗もしていました)、1週間前の週末、新額堂へキャンベル枕木を買いに行きました。その袋に入っている説明書に、治具の元になるテンプレートが印刷されているからです。
それで35年ぶりに枕木治具を新調しました。写真でパネル手前に載っているのが、その新作時具です。
こうすれば、まもなく、行方不明になっている初代もひょっこり出てきましょう。物を探すときは、ためらわず同じものを買うに限ります。買って帰った途端に行方不明の方もまず姿を現わします。これが工具七不思議の一つです。
で、今日は夕方から、週端に英国製のオイル・ステインで染めておいた枕木を、テーブルのストップ・ピッチを慎重の確かめながら、ピットの周囲に貼っていきました。写真はその成果です。まだ半分ほどですが、これでキャンベル枕木一袋、1000本ちょうどです。ターンテーブルの周囲を囲む線路の延長って結構長いのです。
このウオルサーズの130フィート転車台はキャンベルの枕木をぴったり寄せていくと、最大で54線が敷けます。つまり、最大53台の蒸機のファッション・ショウができるのです。
ちなみにD&GRNに使ったキャンベルの枕木は何本ぐらいか?
スタンダード・ゲージ用は最初、キャンベル社から直接バルクで60,000本買い、それを使い尽くして、10,000本ずつ、2回買い足したうえに、1,000本袋を何回か買い足して、それがほとんど払底しています。その上にポイント用、鉄橋用、ナロー用が使われていますから、合計で、9万本超は確実、ほぼ10万本に手の届く本数になるのではないでしょうか?
まさに、塵も積もれば‥ですね。