レイアウト人生―「D&GRN」への道程 Vol.1
幼稚園へ上がる前ごろ、大自然に憧れる私を魅了したものは鉄道模型の「レイアウト」でした。屋内に山野を再現し、そこにレールを敷いて駅や人家、人形を配置するもので、「列車が走る」ということでそれが活き活きとし、単なる標本としてのジオラマとは、興奮度がまるで違うものでした。
その巨大なものが銀座天賞堂の二階にあり、まもなく神田の交通博物館にも登場しました。父もそれに刺激されて、天賞堂から人を派遣してもらい、我が家の二階の8畳洋間の外周に簡単ながら、山や土手、鉄橋の付いたレイアウトを設けました。新聞紙を煮てふ糊を混ぜて紙粘土にし、それで山や土手を作るのを幼い私も手伝って、そこでレイアウトを造る楽しさを覚えました。このレイアウトは父が次にステレオに凝ったために数年で取り壊されてしまいましたが、私はどうにかしてもう一度「レイアウトのある生活」を取り戻したく、模型雑誌でホーム・レイアウトを造った人たちの記事など読みながら、線路のプランを書いては将来を夢想する小学生となりました。
そうした、小学校時代の半ば、月刊「鉄道模型趣味」誌のレイアウト特集別冊で衝撃的な記事に出会いました。米国のJohn Allenというモデラーが造っている巨大レイアウト「G&D鉄道」を、写真家でもある彼自身が撮影したもので、それこそ、岩肌から一木一草に至るまで実物そのもの。連結器が模型用でなければ、実物の鉄道写真と見まごうばかりで、当時の日本のレイアウト技術の水準からは隔絶したものでした。
「日本でこれを造ろう!何とかここまで行くぞ!」そこから、巨大かつ写実的なレイアウト」が人生目標の筆頭に上がったのでした。