レイアウト人生―「D&GRN」への道程 Vol.2
私が影響を受けたジョン・アレンのレイアウトのテーマは「山岳鉄道」でした。レイアウトを立体的なものするならば、斜面を九十九折に登って高低差を付ける山岳線を舞台にするのは当然の選択です。私も「造るなら当然山岳鉄道」と考えるようになりましたが、ジョン・アレンのレイアウトを知る機会がなければ、どうだったか?やはり、千載一遇の出会いだったと思います。
しかし「山岳鉄道とそこを行く蒸機の魅力」を主体的に理解させてくれたのは実物の鉄道写真でした。中学に上がって、洋書の写真集でロッキーやシュエラ・ネヴァダ山脈を越える蒸気機関車の往年の奮闘を見、やがて、日本からもいよいよ蒸気機関車が姿を消していくのが加速度的になったのを感じて、一時米国の鉄道から日本国内に目を移して全国にカメラを担いで出かけるようになって、生の蒸機の勾配での激闘の迫力を眼前にしたことで、「模型もやっぱり蒸機、それも急勾配がセットでなければ、真の魅力は味わえない」と思い知ったのでした。
その後10年ほど、夢中で鉄道写真を撮った、実物の蒸気機関車を勾配線で写した、というのは、私には言い尽くせない貴重な経験になったと確信します。好適な撮影ポイントを探して、延べにすれば数百キロの線路端を歩き、土手や切通しを登り降りしたことで、線路と地形の関係を体が覚えたことはその後、実際にレイアウトで地形を拵えるときに、直感的にイメージ作りができるようになったのにつながりました。
ですから、「D&GRN鉄道」の沿線風景は「ここで列車写真を撮ったら、こう写る」ということを常に意識して造ってきた、といえます。つまり、「好適撮影ポイント」の連続でもあるわけです。従って、鉄道写真家の目で見て飽きません。そこでいつまでも列車の来るのを待っていたくなるような風景を造りたい、というのがコンセプトの大切な一つであり、「こういう場所で一度写真が撮ってみたかった」という「夢の撮影ポイント」の表現でもあります。